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古い鋸の材質 [道具]

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昔の山林用の鋸や斧、鉈など、いわゆる荒物と呼ばれた道具は、繊細な大工道具などに比べると低品質な素材が使われていることが多く、玉鋼の時代では一番良いものは刀鍛冶、次が大工道具を作る鍛冶、そして田畑の鎌やスキ、クワなどの農具を作る鍛冶、最後に荒物を作る鍛冶屋となっていたらしい。ときには壊れた農具などを持ち寄って作られたことも珍しいことではないようだ。

という大前提があるので、古い山用の大きな鋸は大工用や細工用の鋸と比べるとどうしても雑な作りに見える物が殆どらしい。「らしい」というのは自分ではたいした数を見ていないので断定できないからだけど、自分の鋸を見てもそれは納得できる。

ただ、古い時代の山で使われた鋸を見ると、ほとんど元の形を留めていない。歯が欠けたために歯先を全て削り落とし、新しく歯を付け直したもの。山で仕事をしながら毎日のように目立てをして歯がすり減り、徐々に本体が削り込まれたものなどだ。酷いものは鋸の幅が半分になっていると思えるものもある。自分が持っている鋸もかなり形が違っている。

昔は鋸の歯の形は切る樹木に合せていた。木が柔らかい、硬いで歯の山の角度を鋭角にしたり鈍角にしたり、交互に振り分けられた歯の出方を変えたり、樵、杣などと呼ばれた人達は、一日にどれだけ切り倒すかで収入が違うので、道具はシビアに手をかけていた。

ただ、当時の山師達はシビアなだけに「使える」道具は手放さず、最後の最後まで使い切る。これは大工が気に入った鉋や鑿を鋼がなくなるまで使い切ることと同じこと。逆に考えれば、使い込まれて形が変わってしまった道具にこそ、特別切れ味の良い良いモノが紛れ込んでいることもあるのかもしれない。

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今日の写真はたぶん昭和30年くらいまで使われたと想像できる鋸と、大正時代に使われていたんじゃないかと想像される鋸の一番手前の歯。いわゆる「鬼切り刃」とも呼ばれるところ。

歯先を少しだけ研いでみたのは、どんな材質のハガネが使われているのか見てみたかったからだけど、1枚のハガネを折り返して叩き、それを何度か繰り返して作られたものもあるらしい。あるいは持ち寄られたハガネを集めて作られたものかもしれない。どちらの写真も2枚のハガネが合せてあるようにも見えるけど、ちょっとはっきりしない。したの写真では一方が薄く見えるような。まあ、はっきりさせることが目的でもないので、それはそれでいいのだけど。
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voyagers-x


おはようございます!!
包丁やカッターなどの切れ味は日常生活の中で実感をしやすいので、切れ味がいいと使ってすごく楽に感じますけど.....鋸、あーやっぱり鋸も切れ味がいいと使いやすいでしょうね。楽に切れるので、切っていて曲がったりしないのでしょうね

by voyagers-x (2016-02-01 09:47) 

川越

> voyagers-xさま
刃物は切れないと使いづらいですよね、危ないし。鋸もチェーンソーも同じですけど、ちゃんと研いで切れるようになっていると、仕事が楽だし気持ちいいです。でもノコギリは微妙なバランスの上に成り立っているので、長く引いて来なければいけない仕事だと曲がりも気になるでしょうね。私の場合は精々丸丸太を切るくらいなので、多少曲がっても気にしません。(^^; もちろん曲がらないように目立てができるようになりたいです。でも必要な道具もまだ揃ってないので、これからの課題です。
by 川越 (2016-02-01 10:40) 

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