狐火になった男 [いなかの伝承]
山怪 五十嵐晃/田中康弘(https://comicborder.com/episode/3269754496330971004)というコミックがネットで無料で読める。これは田中康弘さんが日本全国で集めた山の不思議な話を漫画にしたもので、元々は山と渓谷社から「山怪」のタイトルで発売されているベストセラー本。
もうずいぶん昔、田中さんと一緒に仕事をした縁もあって、ついファンになってしまった。それにこういった不思議な話はとても興味深いこともある。
その山の不思議な話の一つに「狐火になった男」という話がある。狐火といえば自分の住む隣の町、柏崎市の高柳町では日本一狐火が多い町として、狐の夜祭というイベントも開催されている。
それはさておき、「狐火になった男」だが、内容は上のアドレスを辿ってもらえると短い漫画が読めるので一読してほしい。それとよく似た話を隣の婆ちゃんが話してくれたことがある。
もう50年も前の話だそうだ。この辺りでは田んぼを作る平地が少なく、山の斜面に小さな櫛田(棚田ともいう)がいくつも並んでいるけど、その何枚もの田んぼの水を取る取らないで揉め事もあったらしい。
そんな時代、隣のばあちゃんは地主さんに頼まれて、夜中になると小さな懐中電灯を持ち、明かりが漏れないように手でライトを隠すようにしながら畔を歩いて、沢の水をこっそり田に引き込んでいたらしい。
そんなことが数日続いたある日、近所の婆ちゃんが「おまえ、怖くないのか?」と言ってきた。「何が?」と隣の婆ちゃん。「なにがって、おまえんちの裏の山に、夜になると狐火が出て、山の裾を歩いてるぞ」。「狐火?夜中の何時ごろに出る?」と婆ちゃん。
するとどうやらその狐火、ばあちゃんの持つ懐中電灯を見たものらしい。しかしまさか自分が水を盗っているとは言えない婆ちゃん。怖がる近所の婆ちゃんに「そんなことあるもんか」と相手にしなかったらしい。
水の取り合いが騒動になる時代の話、たぶん他所にも似たような話がいくつもあるんじゃないだろうか。
川越さま
「隣の旧・高柳町で開催される狐の夜祭」まで読んで思い出しました。
その辺り、新潟県中央の山間部では「狐の嫁入り」と呼ばれる不思議な天候(降雨中にも拘らず、空が晴れ陽光が射し込む奇怪な現象)が時々発生し、為に、その高柳町には「じょんのび祭り」と云う奇祭が伝わっているそうです。
10年ほど前に、川越氏がこちらのブログで、その奇習・奇祭に言及されていたので、私がネット上に公開されていた某・映画監督の晩年の傑作より一部を案内した記憶があります。
その映画の雰囲気と、本日の日記で紹介された漫画の雰囲気が誠に良く似通っており、その一件を思い出した次第です。この漫画の筆致には、何処となく、水木しげるや柘植義治に通じる趣が在り、楽しませて貰いました。
お元気で。
by Yozakura (2021-05-30 19:15)
>Yozakuraさま、こちらにもありがとうございます。
そう、狐の嫁入りやじょんのび祭りもありますね。私と同年代の人の中には実際に狐火を見たという人もいますし、年寄りの中には今の人には信じてもらえないだろうが、昔は狐や狸にばかされた人がいくらでもいたと話してくれる人もいます。
山には得体の知れないモノが棲み、里では狐や狸が悪さをする。そういう世の中だったんでしょうね。不思議な事象はことごとく科学で説明がつくという人もいますが、自分としてはそれだけではないモノがあると思っています。
ところでこの漫画の絵を担当している五十嵐晃さんは、墨の濃淡で描いているのですが、仰るように水木しげるや柘植義治に通じるモノがありますね。私はこの絵の作者がとても好きで、イラストを手に入れたいと思ったこともあります。
by 川越 (2021-05-30 20:14)
>Yozakuraさま
あのムービーのことが気になり、また見てみましたが、youtubeでも見ることができます。「黒澤明 夢 メーキングムービー 1/8」で検索してください。黒澤明の制作現場などを見ることができます。
狐の行列は面をかぶっているのかと思ったら、メイクだったんですね。
by 川越 (2021-05-30 21:25)
川越さま
早速の返信、有難う御座いました。
さて、本日の投稿に誤字が2箇所有りましたので、訂正します。
(人名) ×:柘植義治 →◎柘植義春 (5月29日の狐火の記事への投稿で)
(年号) ×:明示 →◎:明治 (5月16日の藤の花房の記事への投稿で)
どうも失礼しました。
by Yozakura (2021-05-30 23:54)
川越さま
たった今、2通目の返信も拝見。その映画監督は巨匠として知名度が高く、考えることは同じなんですね。
私もネットで検索し、ご推奨の動画共有サイトにて、各種の関連ビデオを発見。昼間はたっぷりと見て仕舞いました。お元気で。
by Yozakura (2021-05-31 00:05)
>Yozakuraさま
おはようございます。誤字の訂正、youtubeの件とありがとうございました。やはり見ていましたか。制作現場のシーンは見てしまうと映画の雰囲気というか、作り物というのが気持ちの中で嫌が上にも納得させられてしまうので、内容にのめり込むのが難しくなる面もありますが、あのムービーの場合は元々が伝承の類なので、あの黒沢がどうやって作ったのかを見ることができるのは良かったと思います。あの小僧、狐の家に行って許してもらえたんでしょうか?でも狐は神様の使者でもありますから、きっと許してもらえたんでしょうね。
by 川越 (2021-05-31 07:39)