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雪峠 [いなかの伝承]

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昨日ブログにあげた雪峠、実は1年ほど前から知っていたけど、その名前の美しさにいつかいってみたいと思っていた。しかしこの辺りには「鼻毛峠」みたいな変な峠もあるし、法師様が通る峠で「法師峠」。それがいつしか「星峠」になるなど、昔話も多くて興味深い。

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その雪峠、実際に行ってみると南側から登れば自転車で10分もかからない小さな峠、北側からは小さな丘程度の実にさりげない峠でした。本来であれば雪が降った後に見てみたいのだが、この辺りも豪雪地帯でそれも難しそう。

ところでこの峠は雪景色が美しくてこんな名前になったと思い見てみたい気になったのだが、そう単純なものでもなかった。例によってここに伝わる伝承を2つ紹介します。

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昔々、池ケ原と芋坂のあいだの峠に一軒の茶屋がありました(池ヶ原とは雪峠の西にあり、芋坂は東にありますが、同じ地名がこの辺りにはあちこちにあるのが困る)。

茶屋は「おゆき」という美しい娘と父親の二人で切り盛りされていたが、この峠の茶屋はたいそう繁盛し、父親は「おゆき」を眼の中に入れても痛くないほど可愛がっていた。

親娘の生活は一見平和そのものだったが、父は峠を通過する金持ちの旅人を見ると途中で殺して金品を奪っていたのだった。おゆきはそれをまったく知らなかったがそれも長くは続かなかった。

ある時、早めにお客がとだえた。父の姿もいつの間にか見えない。おゆきは父を探しに行くと、たまたま例の行為を目撃してしまった。おゆきは驚き悲しみ、
「あんなことはやめて下さい」と何度も頼むが父は聞き入れない。

ある日、おゆきは旅人の支度に身をかため、夕暮の峠道を登って行った。父はそれを見ると「小柄だが金持ちらしい。いいカモがきた」と、いつもの所で一刀のもとに斬りつけた。

笠をとると、旅人の正体はおゆきだった。 父は驚き悲しみ、深く後悔して僧侶となり、自分が手にかけた旅人の冥福を祈って一生をすごしたという。それ以来、この峠をゆき峠と呼ぶようになった。

もひとつの説は、徳の高い僧侶が峠の頂に立った時に、あまりの景色にみとれ 「よき峠である」といい、それからこの峠を「よき峠」。それがなまって「雪峠」というようになったという。
タグ:田舎の伝承
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