山に入って声をだすといえば、一般的なのはなんといっても「やっほー」。頂きに立ち、目の前の山並みに向かって「やっほー!」と叫んだ経験がある人もいるんじゃにだろうか。かくいううちの相棒も高いところに立つと「やっほー」がでる。ときにはやまびこが遠くから「やっほー」と返してくれるのもほのかに嬉しい。

私達の場合山といえば山菜狩りやキノコ狩りだけど、夢中になって探しているとはぐれてしまうことは珍しくない。というよりも、同じところを探しても能率が悪いし、連れよりも良いものを見つけたいという思いがあるので、どちらからともなく離れて行くのが普通だ。

それでもお互いに場所が分からなくならないように、ときどき「どうだぁ〜」とか「いるかぁ」などとお互いに声を掛け合い、位置を確認しながら探し歩く。そういえばキノコ狩りや山菜狩りの季節は、毎年のように行方不明のニュースがありますよね〜。

思えばいまでは薮の中で「おーい」と声をかけながら山菜採りをしたり、キノコ狩りをする人もいることは確かだけど、昔から人里馴れた山深いところで生きて来た人達の間では「山で『おーい』と呼ばれたら絶対に返事をするな」といわれている。山で「おーい」と呼ぶのは化け物で、呼ばれて返事をした者は「おーい、おーい」と呼ばれて行方不明になってしまうのだ。

戦後辺りまで山で生活していた人たちの間では、返事をしたために行方不明になった仲間や、なんとか引き止めて事なきを得たという話しがいくらでもあるようだ。ことの真偽は不明だが、実際に経験した人の話では、「思わず返事をしたら引き寄せられるように崖のほうに進んでしまった。仲間がいなかったら・・・」ということで、考えなしに呼ばれるままになってしまうらしい。

ところで、山で聞き慣れない声で「おーい」と呼ばれたときはどうすればいいのか?これはけっこう簡単で、一番聞き慣れた「やっほー」と返すことで黙ってしまうらしい。くれぐれも知らない声に「おーい」と返事をしないように。でもけっこう山の中で「おーい」って声は聞こえるんですよね。