かれこれ50年ほども前の記憶になりますが、子供の頃に化けネコと同じくらい恐かった記憶があります。それは木で彫られた仁王さまが子供を食べてしまったという話しです。そんな話しを聞いた記憶がある人がいるんじゃないかと思いますが、大まかな話しは次のようなものでした。

「むかし仁王門の近くに一軒の農家があり、母は泣き虫の子供に口癖のように『泣くと仁王さんに食われてしまうよ』といっていた。ある日泣きじゃくる子どもを置いて仕事をしていたが、気が付くと子どもの泣き声が聞こえない。必死になってあたりをさがしたが見つからず、「もしかしたら・・・」と、髪を振り乱し仁王門に来てみると、仁王の口から子どもの付紐が下がっていて、その付紐は木でできた仁王の口から生えているように、取ることができなかった」

ずっと忘れていたのですが、この仁王さまは自分で勝手に鎌倉にあると思っていました。もしかしたら最初にこの話しを知ったときに、鎌倉の話しとしてあったのかもしれません。でも、むかし母と行った鎌倉で「ああ、これがあの仁王さまか」と思った記憶もあるので、鎌倉にもこんな伝説があるのかもしれません。

で、どうしていきなりこんな話しを思い出したのかと言いますと、先日走って来たコースの慈光寺(前回のブログ)の仁王さまがまさにこの伝説の仁王さまだったんです。残念ながら昭和60年に焼失してしまい残っていないのですが、なんとなく「ここがそうなのか」と、古い記憶が呼び起こされてちょっと感慨深いものがありました。