長野や新潟にサイクリングに出かけると、ときどきビックリするような大木に出会うことがある。保護されている場合もあるが、ほとんどは自然のままにそこにある。少し前にはこうしたお金になる大木は夜中に伐採されて盗まれることも多かったらしいが、いまでは輸入木材が安く入るためなのか盗難の話しは聞かなくなった。

この大木はこんな姿なので、人目につくところにありながらも無事だった。一般に木の実は、動物たちに全ての実を食べられてしまうのを防ぐため、定期的な豊凶の波を持つらしい。ところがブナには豊凶の定期性がない。

いつだったか、新潟の山奥でナメコをたくさん採ったときに、鍋をつつきながらブナの実をそのままで殻を剥いて食べた。そのうまさは格別で、熊に食わせておくのは惜しいくらいだった。地元の人の話しでは、「ブナの実を持って帰り、もやしを作ると最高」ということだった。

食べてみたいと思ったが、その願いはほどなく実った。春先にウサギを撃ちに行くのについて行ったら、雪がほとんどなくなったブナの大木の下から、いくつものブナのもやしがでていたのだ。丁寧にとって帰りさっとお湯に通して食べたもやしの味は、豆をそのまま食べているようなコクのあるうまさだった。近年ブナの豊作とは耳にしない。そろそろ山のようにブナの実が採れる秋になって欲しいものだ。