スギヒラタケの話しが出たので、ちょっと調べて見た。ネットで大雑把に調べただけなので間違いもあるかもしれないし、私には関連するあらゆる専門知識がないので理解が違う可能性もあることを先に記しておきます。

2004年、スギヒラタケ中毒と疑われる事例は、新潟、秋田、宮城、山形、石川、福井、福島、鳥取など9県(もう1県が不明)の59人にのぼり,うち19人が亡くなった。2004年以前にも同様の中毒があったようだが、この年ほど激しい例はなく、その後も報告はされていないらしい。

おかしいのはいわゆる毒キノコと違って、スギヒラタケ自体には毒性分が見当たらなかったことと(その後の研究で毒性分がいくつかあるとも指摘されている)、家庭内で同様の症状を確認していないこと。もちろんウイルスなどでもなかったらしい。ただ腎機能が低下している人が多く亡くなったことも事実で、この辺りにヒントが隠されているのかもしれない。

キノコは元々回りの環境によって毒性が変化する話しは、以前からキノコに詳しい人達の間では交わされていた。森林の土壌内の有機成分を蓄積、移動、循環、分解などを担っているのがスギヒラタケを含むキノコ類であれば、「キノコは大なり小なり毒素を持っている」といわれるのは当然のことかもしれない。

その可能性から探れば、2004年は酷暑と台風の多さが目立った年だったが、「酸性雨が土壌中の鉱物を分解し、土壌中に有害なアルミニウムイオンなどが溶け出してスギヒラタケに蓄積された」と考える意見も無視できない。

アルミニウムが脳神経を犯すことは知られたことらしく、スギヒラタケが脳症を引き起こして死亡事故を起こしたことに繋がりはある。しかし秋田県の神経内科、泌尿器科、中毒学の専門家によるプロジェクトチームは「スギヒラタケからも目立った金属類の検出がなかった」という報告があるのは、この説の説得力をなくしている。

結局、原因についてはいまだにはっきりとした結論は出せていないようだ。アルミニウムが全ての要因であったとは言えないようだが、土壌が何らかの理由で性質が変わってスギヒラタケに影響を与え、それを食べた人間が急性脳症になったという考え方はありかもしれない。

しかし矛盾もある。そうだとすればスギヒラタケだけの問題ではなくなるはずだからだ。あるいは地域的に限られたエリアの土壌でキノコを食べ続けて、それが蓄積したことであるときついに発症ということだったのだろうか。それでもスギヒラタケを理由にするには無理がありそうだから、なにかまだスギヒラタケで分かっていない成分、原因があるのかもしれない。

興味深いのは当時ネット版読売新聞で「過去に脳症患者の発生地域で採れたキノコは毒性があったが、患者報告がない地域で採れたキノコには毒性が認められない」という記事。2004年には多くの中毒が集中して注目されたが、それ以前にも同様の脳症死亡事故はあったものの、原因がキノコとはならなかったのではないだろうか?2004年では発症まで平均8日という記録があるので、見過ごされた可能性は高いと思う。風土病と考えられていたドクササコの中毒と類似点がありそうだ。

今年も酷暑が続いたあとに、なにかと大雨が多い。条件としては2004年と似たような状況になっているのではないだろうか。場所によっては2004年と同じようにキノコの豊作が言われているのも、似ているかもしれない。

スギヒラタケに限らず、急に毒性を持つキノコは他にもありそうなので、豊作とはいえ大量に食べるのはリスクがあるかもしれないのは、茸狩りが好きな人たちには辛いところだ。「食べてから時間が経ってから症状の出るキノコほど深刻なもの」というのは、スギヒラタケにも当てはまっているので、要注意だ。

<追記>
コメントを頂いたTohno さまのところに、最近の新たな情報がありますので、興味のある方はリンクを辿ってみてください。