普段使うのは完全にデジタル一辺倒だし、フィルムカメラはもういらないんじゃないかとよく考える。ところが昨日はちょっと気持ちに余裕があっていくつかのお気に入りの写真集を眺めていて、今更ながらに気が付いたことがあった。

それは「フィルム写真はデジタルカメラでは撮れない写真が撮れる」ということ。もちろんその反対もありで、これは気持ちがどっちに傾いているかで違うのだろう。つまり、自分の中には今でもフィルムで撮りたい気持ちが残っているんだ。

デジタルではオートISOで夜でも昼間のように速いシャッターが切れるし、自動追尾AF、顔認識、自動露出、手振れ防止などなど、写真の内容はともかく、いつだってきっちりちゃんとした写真が撮れる。「写っている」という意味では、デジタルはしっかり写し取ることができる。

ところがフィルムの場合はピンは合わない、ブレは目立つ、露出は狂う、暗ければ写らないし増感すれば点描のように粒子が目立ってしまう。こんな写真はデジタルには撮れない写真だ(テクニックがあれば別かも)。

でも写真集をゆっくり観ていれば、そんな写真は普通にでて来る。だからといってそれらの写真が箸にも棒にも引っかからない、全く印象に残らないダメ写真かといえば、その反対だったりする。

写らない写真だからこそ印象に残るってこともあるし、夕闇の臨場感や現実味、あるいは夢のような写真がフィルムでは写せるのかもしれない。いつでもどこでもキッチリ写るって、写真にとっては必ずしも正解じゃないこともありそうだし、それに何パーセントかは偶然の入り込む余地があるってのは、写真にとってはとてもいいことなんじゃないだろうか。