背負子に、1尺4寸と1尺2寸の鋸を入れた桐の入れ物をくくりつけ、鉈とロープを付けて裏山に

久しぶりの更新。ここのところ砥石にはまり、面だし(砥石の平面を出す作業)をしたり、鉈や包丁を研いだりしていた。これはこれでマニアックな世界で、古い刃物を探したり、大工道具をひたすらシビアに研いだり、膨大な種類の天然砥石を楽しむ人達もいる。

この数日その魅力の一端を覗いて、研ぎや砥石の魅力は自分なりにわかったけど、ちょっと違う世界と納得もした。自分は集中してのめり込むのは嫌いじゃないし、刃物を研ぐのも好きだけど、うっかりすると今は使わない鉋やノミまで買ってしまいそうで、今はもうできない世界でもある。

鋸もそれなりにシビアな目立て(研ぎ)があるけど、現場でもやれる程度のことがメインになるので(いや、それは無理か?(^^; )、大工道具(鉋、ノミなど)の研ぎとは次元が違う。高い砥石をいろいろ欲しがるよりも(これも魅力だけど)、目立てに必要な金床や万力を手に入れるほうが現実的だ。




裏山もすっかり雪景色。この樹木の間をカンジキはいて登って行きます

今日はまた大雪になりそうな感じだけど、先日は晴れたので背負子に鋸をつけて裏山に行って来た。カンジキを履いても膝まで潜る新雪で山歩きは苦労したけど、どうやら目的の倒木まで到達。少しだけ切って来たけど、薪を運ぶソリも欲しい気がする。

昨年の秋頃から古い鋸を何本か手に入れた。もちろんそれ以前にもホームセンターで買った鋸が2本あった。古いノコギリは目立てヤスリをあてると、ホームセンター物より確実に柔らかい。材質の違い、焼き入れの違いだろう。

全てがそうなのかは知らないけど、ホームセンターの鋸でも先端の歯の部分だけに特殊な焼きを入れてあるものは、硬すぎてヤスリが滑って全くかからない。研げないので替刃式になっているわけだけど、それでいて本体部分はかなり柔らかい金属が使われている。

その方が製作過程で工作機器が傷まない、作業が簡単になる、安いなどメリットが多いのだろう。歯先が硬いので良く切れるし、切れ味の持続性もいい。だから替刃式の鋸が当たり前になったのは簡単に理解できる。

でも、使い捨ての道具はやっぱり嫌。技術が進んで安く、高品質の道具が作れるようになって、多くの人が納得しているんだからそれはいいけど、気持ち的に道具はどうしても手入れしながら長く使いたい。

ところで最新の替刃式鋸、切れ味も最高かと思うとそうともいえないのが刃物の不思議なところ。先日会津最後の鋸鍛冶に目立てをして頂いたが、昔の鋸の方が文字通りザクザク切れる。太い木を切るのに「どうしようかなぁ」と、躊躇しないですむのは精神的にもずいぶん違う。

切れなくなれば自分で研がなければならないのが現代物との違いで、面倒なぶん欲しがる人もなく、替刃式鋸の替刃よりも安い古い鋸は、実用面で考えれば持つ価値は充分あるんじゃないだろうか。目立てを含めて、メンテナンスが楽しめる人なら古い鋸はさらに魅力的に思える。