バイト先のデザイナー、カール・ベンクスさんのゲストハウスとしてリフォームされる予定の古い民家に行ってきた。相当ガタがきているけど、カールさんはなんとか再生して使えるようにしたいらしい。その2階部分はかなり現代的な作りになっているけど、ちょっと裏に回るとかつての様子が姿を表す。

このおカマのようなものは、今は一階の天井が外されているので天井から飛び出しているように見える。昔の旅館などにもあったものだけど、実はこれ小さな囲炉裏が埋め込まれたもの。2階なので鉄製の火鉢のようなものを埋め込んであり、これが各部屋に暖房器具として用意されていたのだ。もちろん中には灰が入れられて炭が点けられる。

3階にあたる屋根裏にはたくさんの干した藁とともに、藁で編んだ生活必需品があちこちに置かれている。かつてはこの長靴を履いて雪の中を歩いたのだ。ほんの30年前まではまだ少ないながらも使われていたらしい。子供用、女性用に赤い布をあしらったもの、男性用の大きなものなどなど。もちろん草鞋もいくつもあった。

そして右にあるのが雨具の代わりになるミノと背負子を使う時に肩に当てる肩当て。どちらも数十年前のものだけど、その作りの細やかさにびっくり。藁とは思えないような細かな部分にまでしっかりと作りこまれている。こんなものがどこの家でも当たり前に作られていたとは、信じられないような作りだ。

大小二つの背負子は自分が持っているものとは違うタイプだけど、これは茅など比較的軽めだけど、かさばるものを運ぶための背負子で、肩にかけるショルダーがなくて、代わりに首を通すように太めの縄が付いている。その縄が肩に当たるので肩当てが必要になるわけだ。

背負子も肩当てもミノも本当によくできていて、そのどれもが冬の夜に夕食の後囲炉裏の周りで作られていたもの。実は山から薪を運び出す時に肩が痛いので、肩当てが欲しかった。藁のものなんて手に入らないので、なんとか綿入れのような感じで作れないかと思っていた矢先だったので、カールさんに相談したら快く譲ってくれることになった。

早速持ち帰ってきたけど、自分の背負子にはちゃんとショルダーがあるので、昔の人に言わせたらきっと「なんで肩当てが必要なんだ?」と言われてしまうだろうなぁ。