一昨日、友人に誘われてこの集落に一軒だけある酒屋さんに飲みに行ってきた。といってもここはただの酒屋で飲み屋ではない。でもときどきお酒を買いに行くとご主人が珍しいお酒や、新しいお酒を試飲させてくれたり、飲み比べをさせてくれる。

ということで、店を閉めた後に酒盛りが始まることもある。今回は友人がチーズをたくさんもらったということで、これをつまみにワイン三昧だった。3人でボトル4本を開けたところで帰ってきたけど、すっかり酔っ払いになってしまった。

この時に見せてもらったのがこの酒瓶。どうやら戦前にこの店で使っていた酒瓶らしいが、一升瓶の形というのは珍しい。普通はもっと下の方が膨らんでいて背の低いものが使われる。この下膨れの形は基本的には船に揺られるような場所で安定するためだけど、この一升瓶はこの地域独特のもののようだ。

というのは、この細長い形は囲炉裏の灰の中に埋めるためのもの。朝この酒瓶を囲炉裏の端に埋めて畑仕事に出かけて行き、日が暮れて帰ってくるとちょうどいい塩梅にぬる燗ができている。それを囲炉裏に当たりながら一杯やって1日を終えるらしい。

一升瓶の形など気にしたことがなかったけど、なるほどなぁと感心した。そういえば私の好きなお酒に雪中梅があるけど、このお酒は美味しいのにあまり生産量が多くない。売れないわけじゃなくてたくさん無理して作りたくないらしい。

いわく「地元の人が1日の仕事の終わりに、一杯だけ飲んで『今日も疲れたが、うまいなぁ』と満足してもらえればいい」ということらしい。名が知れると大量生産になり、どこか味が変わる酒蔵もあると聞くけど、昔からこのお酒を飲んでくれている地元の人だけに満足して飲んでもらえればいいと、納得のいくお酒を作り続けるというのもいいものだと思う。