焚き火小屋の備忘録(http://nature21.exblog.jp/14417211/) というところに、災害時に役立つストーブの作り方がありましたので、紹介させて頂きます。おそらく煙突効果を使った燃焼原理に基づいて作るものですが、比較的簡単に作れるし、効率もいいので頭に入れておくだけでも何かの役に立てられると思います。


原理の理解のために。もしくはサバイバルなロケットストーブの作り方

未曾有の大惨事に混乱・困窮される人々のためのささやかな支援に、おいらの作るロケットストーブがどれほどの意味があるのかなど解らない。

しかも、役に立つことがあっても、物資搬入のための道路網の寸断や物流システムの崩壊を考えれば、「もの」を送る以前にするべきことがあるように感じられ、これにどうすべきかを考えてみた。つまり、災害の現地におられる人々に即効性をもって役に立つと思われる知恵とはなんだろうと…。

これに出来ることなど多くはない。だが、とりあえず、災害の現場に容易に手に入りそうなものを使ってロケットストーブを作ることが出来れば、多少は健全な調理や暖をとる環境を取り戻すことが可能なのではないかと…。

こういう大きな災害がなければ、われわれは、言うなればそれぞれが「我が家」ならではの食の環境を中心に家族としてあるのだろう。そして、そこにこそ、それぞれの自律した暮らしや生き方や、子どもたちの育ちがあるのだと考える。

つまり、そうしたことからこの未曾有の大災害の長くなるだろう復興を思えば、その自律を支える「我が家」ならでは「健康な家族」の関係や「食」の環境を大切にしていただきたいと思うのだ。

選んだ素材は、つまり瓦。たぶん被災された環境でも容易に手に入るだろうし、子どもたちでも手にすることが可能な重量や規格化された形と、燃焼環境での耐熱性を考えれば、これが最良だろうと思われたからだ。。

だからと言って難しいことなど一つもない。ただ、ロケットストーブの原理やその構造を理解して、丁寧に積み重ねる程度でことは済む。

だけに、これがすぐに役立つことがなくとも、あたまのすみに置いていただければと思うのだ。

さて、具体的な作業を進めながらその原理や構造を説明したい。

まずは炉床を作る。ここでは炉の中にロケットストーブを作っているので、すこし高さが低い。出来たらブロックなどを敷き並べて十センチぐらい高くしたほうが使いやすいと思う。

ここで作る調理用のロケットストーブを一言で言えば、この炉床の上に乗る燃焼室(もしくは燃焼トンネル)と、その先にまっすぐ立ち上がるヒートライザー(煙突のようなもの)で構成される。つまり、裸火を焚けばその焚き火に必ず起こる「上昇気流」をヒートライザー内部に集中させ、これの「引き」を利用して自動的な吸気現象(つまり、吹き竹で吹きつづけるような効果を…)を作り出すと理解すれば良いと思う。

次が、その燃焼室を作るためにサイドに瓦を一枚づつ裏返して積むための下地を作る。だが、ここであまり難しく考える必要はない。つまり動かないレベルで。


その下地の上に裏返した瓦を並べる。


その上に焚口の燃料を置くための床を作る。つまり、手で持った瓦の下には左右の瓦一枚分の隙間が生まれている。その一枚分の隙間が「燃焼のための吸気口」になる。


さて、ここからが実際に燃料を入れる焚口の構造を作る作業だ。前に手で持った瓦のサイドに焚口の左右の壁を積み上げていくために、出来れば瓦を縦に割ったものを敷いて下地を作る。


その下地の上に5〜6枚程度の瓦を、吸気口の幅に揃えるように積み上げる。


それを後ろ側から見るとこんな感じ。左右の高さが揃えばあまり細かいことは気にしないでも大丈夫。ちなみにここでは4枚程度にした。


そして、もう一度前に回って、今度は燃焼室の上の部分を写真のように積む。


ここで瓦が奥に向かってすこしづつずらしてあるのが解るだろうか。
後ろにまわってそれを見るとこんな感じ。これは燃焼室内の炎の流れをスムースにするための処置。ここを直角にすると「カルマン渦」という流体特有の障害が発生するからだ。まあ、瓦を積んだぐらいでは大きな変化はないが、一応、構造原理の理解のために…。


これまでの作業で一応燃焼室の構造が出来たので、今度はヒートライザーの作業に入る。これまではそのサイドの壁を積むのに赤い煉瓦をスケール代わりに使っていたが、これをここではたまたま手元にあった耐火レンガに変えている。しかし赤い煉瓦をそのまま使ってもよいし、煉瓦がなければ泥でも練って、上から見たヒートライザーの直径が十センチぐらいになるように塗り上げても良いと思う。


そして、その(ここでは)耐火レンガの高さに合わせて左右の瓦を積む。この瓦の高さがヒートライザーの高さになるが、このヒートライザーの高さが適度に高い方が吸気の引きが良くなり、燃焼も安定することを理解して置きたい。


と言うことで、ほぼ形になったところで燃料を入れて鍋を置いてみた。


そして、火を入れてみると、炎が普通の焚き火に比べて高く吹き上がっているのが解ると思う。つまり、これがヒートライザーの効果であり、少ない燃料を効率よく焚くことを可能にするロケットストーブならではの燃焼の成果だ。


いま一度鍋を載せて、調理をしてみた。


後ろ側から…。煙がまったく出ていないことが解るだろうか。つまりヒートライザー内部が高温になり完全燃焼にちかい状況が生まれ、煙がまったく出なくなる。


実際に焚いた燃料は写真のように庭木の選定で出た小枝や枯れた竹など。この程度のもので十分に調理が可能になる。


さながらプロパンガスの炎のように鍋の底から炎がサイドに吹き上がる。


調理したのは青魚と根菜の炊き物なのだが、こうした時間のかかるものの調理がまったくストレスを感じずに出来るはず。


と言うことで、古瓦を使ってサバイバルな環境で十分使用が可能なロケットストーブを作ってみた。しかし、このストーブの使い勝手のよさはこの程度に止まらない。ここにあげた簡易オーブン(http://nature21.exblog.jp/14344972/)などを使えば、パンが焼けたり…。普通のフライパンなどを使う調理も当たり前に出来てしまう。


また、この瓦を積んだロケットストーブを作ってみて気づいたことなのだが、これを長い時間焚き続けると積み上げた瓦自体がそれなりに温まる。つまり、カッヘルオーフェンのようにじんわりと暖かい暖がとれるのだ。しかし、これはかまどなどの構造を思えば当たり前のことだが…。

ともあれ、ロケットストーブに特筆して置くべきは、この瓦を積んだ程度のものでも燃焼が安定すればほとんど煙が出ない所だろうか。

たぶん、はじめて目にする人はそこに驚くに違いない。また使う人も、煙が目にしみるなどの辛い思いをしないで済むと思う。

瓦さえ手に入れば、ものの30分程度で作れてしまうロケットストーブを出来れば大勢の人に便利に使ってほしい。