良い写真が撮りたいと考えるとき、素人の自分たちはできる限り単純で、少ない機材で撮るのが良いのかなと思う。これは自分が比較的上手くやれている自転車のことを考えても同じことで、あれこれと新しいフレームやパーツ、トレーニング用に考えられた諸々の機器に気を取られていると、ざっぱり強くなれないことと似ている。

毎年カーボン製のより軽く優れたフレームが登場し、パーツも年々高性能になって、それを使えば自分が速くなれるような錯覚を起こす。実際使ってみれば確かにこれまでのものとの違いを感じ、速く走れるような気にさせてくれる。

精神的な部分も速さに繋がることは否定できないが、実際には自転車の重量が3〜4キロ違っても、最終的なスピードには違いが出ない。たとえば100キロ走ったときのアベレージスピードが時速25キロの人は、200万円の最新レーサーに乗ってもアベレージが26キロに上がることは残念ながら、ない。

30万の自転車でも200万の自転車でも、ゴールのタイムに差がでないのはウソのようだけど、これは飛行機で移動する場合、エコノミークラスもファーストクラスでも到着時間は同じということと似ている。

もちろんごく短い場面では違いはあるのだが(飛行機なら機内食の質が違うように)、レースのように基本的に集団のスピードで走り、部分部分でスピードが上がるような走り方ではなかなか機材の差はでない。やっぱり普段の練習で作られた基本的な能力だけが、結果に影響して来る。

それでも「軽くて踏みだしの軽い自転車なら集団内でも楽ができるので、スピードの上がったときに余裕が持てるんじゃないか」と考える人もいる。高い金額を払えばそう思い込みたいのも無理はないが、これは先の飛行機の例でいえば、飛んでいる間にシートで寝ていても、機内で歩き回っていても、カロリー消費は違うけど、到着時間は同じといえばわかりやすい。

これを写真の場合でいえば、オートフォーカスで露出もオート、数百もの設定ができる高性能のカメラがあり、焦点距離別の高性能レンズが欲しくなるけど、「高性能カメラがあれば被写体に専念できるのでいい写真が撮れる」という錯覚をするのと似ている。

ところで、実際に写真を撮るときに使うレンズは1本で、出来上がる写真のでき不出来はどれだけ被写体を見ているかが問題になるとすれば、やはり高機能カメラなら良い写真が撮れるわけじゃなく、狙った露出でシャッターを押したいときに押せる、単純なカメラを使うことが上達に繋がりやすいんじゃないかと思う。

そう言う意味ではやはりライカはいつでもシャッターが切れて、設定も「絞り、シャッタースピード、ISO」の3つを決めればあとはほとんど触る必要がないカメラで、上達するにも良い写真を撮りたい人にも良いカメラなんだと感じる。

実はGRでもいろいろな設定ができてしまうが故に、使い方に迷う場面がたびたびある。まあこれは記憶力低下という面もあるかもしれないけど、一眼ではときにシャッターさえ切れない場合もあることを考えると、ライカとは大きな違いだなぁと感じる。いや、ライカの替わりにニコンFEでももちろん良いんだけど。

とはいえ、ボディ1台、レンズ1本に絞ることがどれだけ難しいことか、目の前にあるたくさんのレンズを見れば明らかなんだけど。