全長46センチ。柄はすげ替えようと思っていたけど、予想以上にしっかりして使いやすいのでこのまま使うことに

最近ヤフオクで気になる斧が出ていたのだが(2,000円)、どうも出品者が気になって入札を躊躇していた。かなり古そうな斧で、柄の部分も痩せているように見えるし、作りもどこか違う感じ。手に入れても使えなかったら嫌だなぁと。

銘は「秀常」とある

でも部分的には土佐打刃物の伝統的な作りの特徴が出ているし、銘が入れてあるし、ハガネを挟み込んで作られる日本の伝統的な斧にも興味津々だったので、つい落札してしまった。

こんなところにもなにか刻んであるけど(五●)、判読できず。

結果をいえばこれはおそらく土佐もので間違いなしで、相当古いもののような感じ。でも軽く使った感じはとても気に入ってしまった。なにより切れ味が鋭い。これはハガネの効果なのかな。

土佐の斧にはいくつかの特徴があり、その代表的なものが片面(左・裏)に三条、もう片面(銘の切ってある方・表)には四条の刻みがあること。これは「七つ目」と呼ばれる魔除けのためのもの(諸説有り)で、これがない斧は「杣ジキ(調伏や祈祷を意味する行事)」を施さなくてはならないといわれている。

また山仕事中に不注意の事故や道具を紛失した際、祟りを呼ぶかもしれないと恐れたため、呪術として三条側の一本を斜線にし、長さを不揃いにすることで七つ目を不完全なものとして祟りを封じるらしい。

そして「帯」。いまでは表面を傷つけて帯状のヘアラインを付けるだけのデザインになっているが、この斧はしっかりと溝になるように帯が付けられている。また「七つ目」は現在では製作の途中でまだ斧が赤く染まっているときにプレス機で付けられるが、この斧では最終仕上げ段階で古式に則ってタガネで付けられているのがわかる。

ところが、最近の土佐モノといえば柄の入る部分の形が長四角だが、この斧では楕円形になっている。ちなみにここが台形だと長野で、楕円形はその他の土地のものだという。それでいえばこの斧は土佐造りではないことになるが、おそらくこうした決まり事は近年になって作られたものなのだろう。

七つ目にしても帯にしても今では作業効率が先になって、本来の目的が忘れられて形ばかりのものになっているようにも思える。

「秀常之作 保険」と読めるけど、保険ってなんだろう?

とはいえこの「七つ目」、恐がりの自分が夕方から山に入るときなどは思いがけず心強いことに気が付いた。単純だなぁとは思うけど、些細なことでもけっこう気持ちが違うものだ。これは以前書いた鋸の鬼刃に通じるものがあるかもしれない。

でも使った感じ、切れ味はもちろん、持ったときのバランスも良くて、今まで一番のお気に入りだった同じサイズのグレンスフォシュブルークスのスモールフォレストよりも良い感じ。いまのところは落札して良かった。(^^)