50gから265gまで10本の歯槌と、2種類(左側)の修正用槌。今の所目の細かい鋸の目立ては難しくてできないので、左の小さい4本は今後のためにって感じ。基本的に大きな鋸がメインなので、使うのも大き目の槌になる。でもゆくゆくは細かい鋸も自分で目立てするつもり

うちには趣味と実用を兼ねた鋸が大小10枚以上もある。小は折りたたみ式から、徐々に大きくなって両刃鋸が2枚、そして片歯鋸では大きなものは歯の部分が2尺(60センチ)以上あるものまである。折りたたみ鋸以外は替刃式ではないので、切れなくなれば自分で目立てをして(刃先を研いで)使っている。

目立てに使うのはヤスリだけど、何度か目立てをすると歯が短くなるので、歯の谷の部分を擦り込んで歯を長くする。そのときに歯の1枚1枚を左右に振り分ける作業(アサリだし)が必要になる。


全部の槌の刃先の幅、厚みが違う。鋸歯の大きさで使い分ける

アサリだしは、鋸の切り進んだ隙間が板厚だけしかないと、鋸が木材に挟まれて動かなくなるので、歯を左右に振り分けることで溝を広めに確保するための工夫だ。その作業には歯先を叩く歯槌というトンカチが必要になるけど、鋸の大きさが違えば歯の大きさも違う。

大きな槌で小さい歯は叩けないし、小さい槌で大きな歯を叩いても作業が進まない。というわけで鋸歯の大きさに応じた歯槌が必要になってくる。それに使っていると鋸は狂いが出るけど、その狂いを直すには金床の上で鋸を叩いて修正する。




この2つの槌が修正用の槌。鍛冶屋が手打ちしたものをずっとお隣に借りていたけど、その使い心地がよくて同じように手打ちのものを探していた。打った時になんとなく当たりが柔らかく感じる気がする

鋸の縦に狂いが出ているのか、横に狂っているのかで叩く槌の形が違う。基本的に鋸は叩いて伸ばすことでしか修正できないので、その伸ばす範囲、方向によって槌の形が違うわけだ。打つ面が丸いもの(上)は鉋やノミの刃先の修正にも使えるが、面白いのは、その鉋の修正に使いやすいとされる槌の重さが60匁で、この槌もそれに限りなく近い重さになっていること。

この槌は古いものなのに、現代で最適とされる重さと同じにできている。経験値から作られる道具は同じような重さになるのかもしれない。どれもこれも昔の手打ち仕事で作られたもの。焼き入れの跡が残るものもあって、それぞれに鍛冶屋の銘が入っているのも嬉しい。

そんなこんなで作業に応じた槌がこんなに集まってしまったけど、あとはこの道具を使ってしっかり修正技術を身につけなければ。