今朝、なんとなくあるんじゃないかと思って、廃屋跡の台所辺りを歩いてみたら、この砥石が見つかった。この廃屋跡は私たちがここに遊びに来ている頃にはもう家がなく、跡地だけが残っていたので、少なくとも家屋がなくなってからでも7〜8年は過ぎているはず。

その間豪雪や日照りに耐えて、よくこの形のままで残っていたものだと感心する。苔に包まれていたのが良かったのかもしれない。最初は天草の備水砥と思ったけど、汚れを落とし角や縁を丸く削ってみたら会津の白虎砥らしい。それもかなり柔らかい感じできめ細かい。汚れを落としているとすぐにきめ細かな砥泥がたっぷり出てきて、仕上げ砥としても十分に使えるんじゃないだろうかと思えてくる。

50年前、100年前には日本全国に良い中砥がたくさんあったらしいが、いま流通している砥石とはだいぶ質が違うようだ。以前古民家を解体した時に出てきた砥石は新潟の五十嵐砥か会津砥だったけど、もっと固い感じだった。それに比べるとこの砥石は現在の白虎砥よりも明らかに柔らかい。

会津とは今でも山越えのルートが残っているし、かつてはここも関東へ向かう道もあり、交通の要所のひとつだったらしい。それもあって、昔はこの辺りで使われる砥石は会津からのものが多かったのだろうか。ふとしたことで昔の生活を想像してしまった。