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落語で涙? [その他]

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使い回しの写真で申し訳なし


もうしばらくすると70になる。いつの間にか歳だけ取って、振り返っても何もないのが自分と思い知らされるけど、苦労はあったものの遊んでいたらいつの間にか歳を取っていたと思えばそれも随分贅沢なことなんだろう。若い頃から「能天気」「他力本願」などと言われていたけど、そんな気もする。

振り返れば良い人たちに囲まれたおかげで、助けられながらなんとかここまで来られた気がする。普通の人に言わせれば、そういうのはロクでなしというのだろう。

ところでいまだかつて「寄せ芸人伝」なんて漫画は読んだことはあったけど、落語なんて聞いたことがなかったし、聞きたいと思ったこともなく生きてきた。ところが何を思ったか、たまたま聞いた古典落語の「芝浜」が琴線のどこかに触れた。

おもしろおかしいとか悲しい、寂しい、うらやましい・・・そんな感情とはちょっと違う。そんなことがあるのかどうかわからないけど、自分のこれまで生きてきた時間が一気に押し寄せてきたような感情を超えた気持ち。人情話で気持ちが揺り動かされたのとは違うけど、訳もなく感情の堰が切れて涙がこぼれた。

いっときの時間をおいていまブログを書いていたら、随分昔こんなことがあったことを思い出した。あれは四十を前にした頃だった。

一月のうち家に帰るのが10日くらいと忙しくしていたある日、突然仕事ができなくなった。仕事をしたくないわけじゃない。PCを前にすると手が震えて頭が真っ白。一行の文字が書けない。

電話の音が怖くて電話に出られない、仕事が進まないのが気になって眠りたいのに眠れず、疲労ばかりが重なる。目が覚めてもベッドから起き出せない。あらゆるものが進まずに、この先に起こるだろことが怖くて体が震えて眠れない。なんとか起きて仕事に向かうも、無意識のうちに川沿いを歩き、突発的に飛び込んでしまいそうな自分に気がついて動けなくなった。

飛び込みって、絶望からそうしようと思ってする人もいるだろうけど、頭の中が空っぽで知らないうちにそうしてしまう人もいるんだろうと思った。そう思ったということは、頭の中にまだわずかに真っ当な部分も残っていたんだろう。それに気づいてからは無意識のうちにいなくならないように、歩く道にも注意をしていた。

ある日、安定剤を友人に分けてもらい飲んでみた。すると今までが馬鹿らしくなるくらい普通に近くなれた。少なくとも薬が効いている間はなんとか仕事もできる。こんなことなら早く飲めばよかったと思った。

随分あった薬が残り少なくなり、文字通りギリギリでなんとか仕事をやっつけて4ヶ月ほど過ぎた頃、なにも悲しいことがあるわけでもないのに、いきなりボロボロと涙が頬を落ちた。

そのときは「なんだこれ?」って思ったけど、いま落語の人情話を聞いて涙が出てきたことと通じる部分がある気がした。うまく言葉にはできないけど、これまで生きてきた時間を一瞬で振り返ったような、人生の後悔なのか願望だったのか。人情話で感極まったなら「落語もいいもんだなぁ」で終わるけど、もう少し唐突で感情の凹凸が少ない感じだった。

でもターミネーター観て泣く自分なので、涙壺が満杯になると一瞬で涙が溢れ出てくるのかもしれない。なんにしても、こんなブログを書くってのもどうかしているな。読む人もいないブログだから、まっ良いか。オチも何もないお目汚し、失礼いたしました。



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minton

感情が溢れて涙が零れるのとはちょっと違って、気持ちがいっぱいいっぱいになると、顔が歪むでもなく涙が零れるってことありますよね。
そういうときって、嗚咽が出て泣くときよりも実はもっと状況が悪いのにそれに気づけなくて体がSOS出してるんじゃないかなって思います。
友人の精神科医にあなたは大丈夫と言われたことありますが、ほんとに辛いんですと言えない自分がいます。
ただ、底の底の耐性みたいなものがあるんでしょうね。
今も普通に生きています。
スポーツやってたり自転車に乗っていたりする人って(全部じゃないでしょうが)、ストイックに攻めても自分で耐えちゃうところがあるのかもしれないです。

落語、僕も以前はよく聞きました。
新宿の末廣亭は何度も行きました。なんでしょうねあれって。デフォルメした人情の良さみたいなものがあるんでしょうね。
昨今は関西弁の漫才みたいなのが席捲していますが、落語もいいもんですよね。
by minton (2023-07-24 11:00) 

川越

>mintonさま
くだらない話に丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。
私はmintonさんのように多くの人の責任を背負い込んでいるわけでもないので怠けているだけなんだと思いますが、やはり辛い思いをしている人はいるんですよね。当たりまえですけど。

でもスポーツをしている人は・・・というのは、思い当たることもあります。全日本チャンピオンを何度も獲得した友人も同じようなことに陥ったことがあり、練習ができなくなったことがあると話してくれました。

まさに私が経験したことと同じ症状でした。わからない人には「サボっているだけだろ」と言われてしまうんですが、自分ではやりたいのにできないんです。

できない時間が長引くほどに不安が大きくなり、さらに動けなくなる悪循環。出口の見えない辛さ、日増しに切羽詰まっていく周りの状況。当時の状況を正確には思い出せませんが、あんなことは2度とごめんです。

今は何の不安もないとまではいえませんが、幸い心配事もなく生活できているのがありがたいです。

上野広小路亭はまだあるのかな?新宿の末廣亭、入ったことはありませんが寄席が始まる頃になると良い雰囲気でしたね。三丁目の辺りの小さなバーや飲み屋にはタモリや映画監督などテレビで見る人たちの姿もよくありました。ゴールデン街などもちょっと怖かったけど、よかったなぁ。

話がすっかり横に行ってしまいました。落語はほとんど知りませんが、長い年月を噺家の工夫を経て伝えられてきたものは、人情も含めてシンプルに濃縮されたものがあるんでしょうね。同じ話も噺家が変われば主人公の性格まで変化してくるというのも面白いです。

最近の落語も変化しているんでしょうけど、古典落語はやはり古典として残ると良いですね。今の落語もいいものはいつしか古典と呼ばれていくんでしょうけど。
by 川越 (2023-07-24 14:24) 

上海狂人

落語は友人で好きなのがいて、以前CDRにしてくれて古今亭志ん生、柳家小さん、三遊亭金馬など昔の名人のを頂きチェコ時代の朝晩の移動で聴いていましたが、なるほどと思わされるものが多かったですが泣くことはなかったです。
最近は東北の震災の心霊体験談を集めた本を読んで一話毎に泣いています。
とあるおばーちゃんが、幽霊が出ると言われる界隈に夜中一人で立っているので聞いてみると、ご主人が津波で流されて見つかっていない。幽霊でも良いから会いたいと毎晩こうして足を運んでいるという話など聞いた瞬間に涙がでました。

反れますが、20代後半に働いた会社では毎日終電まで働き、上司のいびりを受けて同じような症状になり出社できなくなりました。非常階段の6階から下をみるとアスファルトの皺が6階からくっきり見え、手を伸ばして掴みたくなり、途中で我に返りました。
by 上海狂人 (2023-07-25 10:19) 

川越

>上海狂人さま
「幽霊でもいいから会いたい」という言葉は、連れ合いなら出てくるようですね。私も聞いたことがありますが、その気持ちも理解はできます。実感まではいかないですけど。

上海狂人さんも精神的にも肉体的にも限界になった時があるんですね。私は自覚が全くなかったんですが、いきなりそんなふうになってしまいました。でも我に帰る僅かな余裕が残っていたのは幸運でした。息抜き、ガス抜きは必要ですね。それができる環境作りが大事なのかなと思いました。

しかし毎日暑いですね。梅雨は開けたようですけど、これじゃあ川はまた底が出ていそうです。
by 川越 (2023-07-25 11:39) 

上海狂人

阪神大震災の時には、ほとんど心霊話は出なかったそうですが、東北の震災は何故かそういう話が多いそうです。どういう理由なのか、信心からなのか、わかりませんが。作者は奥野修司という人でサカキバラ事件や認知症のドキュメントなどを取材している人です。東北取材するとそういう話をタクシーの運転手や復興支援の医者などから聴くので、これは単なる怖い話というのではなく、震災後の事例のフィールドワークとして取材を始めたそうです。
by 上海狂人 (2023-07-25 14:02) 

川越

>上海狂人さま
阪神淡路大震災ではそんな話はないんですか。友人が被災しその後大変な苦労をしていましたが、その彼も今年亡くなってしまいました。たぶん自殺でした。あれがなければもっと普通に過ごせただろうにと思います。
東北の震災では幽霊話は多いとyoutubeでも色々ありますね。地域性もあるのかな?
by 川越 (2023-07-25 14:18) 

上海狂人

阪神淡路は昔働いていた会社が元は関西にあった会社で、ローン組んで新築一軒家建てたばかりで被災した方がいて、単身赴任で東京に来られていて気の毒でした。とてもやさしいおっちゃんで立ち飲みに良く連れて行ってくれました。
この阪神淡路は学生で中国に留学しているころ、東北はチェコにいる頃、友人から冗談で、あなたが日本にいる間は大きな地震起きないねと言われました。
土曜から2泊で佐渡に行ってきました。何もないところですが飯は旨い、海岸にはゴミもなく、山と平地の起伏があり風景もダイナミック、フェリーが高くなければ何度も行きたいところでした。

by 上海狂人 (2023-07-25 14:43) 

川越

>上海狂人さま
そうなんですか、私が新潟に来てからまだ大きな地震がないので、上海狂人さんがいる間は大丈夫ですね。
佐渡は良いところと聞いていますが、まだ行ったことがありません。渓流魚がいるとも聞いていますが、不思議ですね。いつか行ってみたいです。
by 川越 (2023-07-25 16:15) 

上海狂人

佐渡はイワナと降海型のヤマメがいるようです。ただ漁協は解散してしまっているようなので、この先増えることはなさそうです。海から200mのところでヤマメが釣れるなんてありましたので、サクラマスかヤマメか区別付かないですね。
by 上海狂人 (2023-07-25 18:33) 

川越

>上海狂人さま
そうなんですか。伊豆にも河口でアマゴが釣れるところがあります。釣れればどちらでもいいけど、サイズはだいぶ違いそうですね。(^^)
でも解散しているということは、釣り券はいらないってことだからいいですね。釣り放題じゃないですか。
by 川越 (2023-07-25 20:27) 

上海狂人

地元の人は渓流釣りなんてしないそうですが一時ブームでかなり場が荒れて大物が釣れなくなってしまったそうです。尺物はほとんどでないようです。佐渡は小さい川ですがそれだけに距離が短いので大雨になると激流になるので、堰堤が多く、落ちてきたイワナは登れないので減少傾向だそうです。どうやら昔下流の岩魚を放流していた人たちがいたのではという話です。
by 上海狂人 (2023-07-26 09:27) 

川越

>上海狂人さま
なるほど、そういうわけなんですね。あんな島の川で渓流魚がいるって、さすがはイワナだなぁって思っていたんですけど、やはり人の手が入っていたんですね。でも一度は遊びに行ってみたいなぁ。
by 川越 (2023-07-26 09:33) 

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